先日のコードレビューの機械的な指摘はSideCIに任せるに続き、 今回は同様のことが可能であるOSSのDangerについて紹介します。
Danger とは
Dangerとは、Pull Requestのレビュー時に発生しやすい、 ”You Forgot To...(...するのを忘れてませんか?)"という指摘を自動化するツールです。
事前に指摘する内容をコードで記述することで、CI上でPull Requestを解析して自動でコメントしてくれます。
課題
Pull Requestをレビューする中で、稀に以下の指摘が発生することがありました。
- PRの本文に説明が無い、又は不足している
- UIの変更があるのにスクリーンショットが貼られていない
- 変更するべきではないファイルが変更されている
- 1つのPRに対して変更が多い
- (WIP中のPRに)WIPラベルが貼ってない
さらに弊社ではIssue管理をYouTrackで行っており、PRのタイトルとコミットメッセージの先頭には該当するIssue番号を付けるというルールがあります。
これらの指摘事項が発生した際にレビュアーが都度コメントするのは労力が掛かりますし、コードとは関係ない手戻り作業が発生してしまう可能性もあります。
そこでこれらのチェックを自動で機械的に即時に行うため、Dangerを導入しました。
効果
事前に記述したチェック項目に該当する場合は、下記のようなコメントが表示されます。
これはPRの作成、又はPUSHした際にCI上でDangerが実行され即時に反映されます。
そのため、PR作成時やPUSHした時点で誤りを把握できるので、レビュアーがチェックしてから修正が発生するという手戻りが減りました。また機会的に指摘されることで、小言を言う/言われる心理的負担も減りました。
それでは、導入手順をローカル環境とCI環境に分けて紹介します。
ローカル環境
導入方法
CI上でも同じ環境を作るためにBundlerでGemの管理をします。
Gemfileを生成
$ bundle init
Gemfileを編集
source "https://rubygems.org" git_source(:github) {|repo_name| "https://github.com/#{repo_name}" } gem "danger" // ← 追加
Dangerfileを生成
$ bundle install $ bundle exec danger init
Dangerfileを更新
warn "変更箇所が200行を超えています。可能であれば分割しましょう。" if git.lines_of_code > 200
上記のコードで、変更箇所が200行を超えていた場合に警告を出すことができます。
次に動作確認を行います。
事前準備
Dangerを動作させるには、PRにアクセスするためのAPI トークンが必要です。
今回はGitHubを例に進めます。
まず、リポジトリにアクセス可能なアカウントのAPI Tokenを取得します。
https://github.com/settings/tokens
個人のアカウントで十分ですが、bot専用アカウントを作ると機械的に指摘されたコメントということが区別できてわかりやすいです。
Webhockの設定でPull Requsetにもチェックが入っているか確認
動作確認
以下のコマンドでチェックしたいPRを指定して実行します。 これらのコマンドで実行した内容はPRへ反映されません。
$ DANGER_GITHUB_API_TOKEN={API_TOKEN} bundle exec danger pr {PR_URL}
既にマージ済のブランチに対してはdanger local
コマンドを使うことで動作が確認できます。
$ DANGER_GITHUB_API_TOKEN={API_TOKEN} bundle exec danger local --use-merged-pr=[#id]
Dangerfileのコードを変更した際にキャッシュが効いて反映されない場合があります。
その際は--clear-http-cache
オプションでキャッシュをクリアすることが可能です。
CI環境
弊社ではモバイルアプリはBitriseを、その他のリポジトリではCircle CIを使用しています。
Bitriseの設定
- API Tokenを登録
- Workflowを追加
- Triggersを追加
以上でBitriseの設定は完了です。 指定したブランチに対してPRが作成された際にDangerが実行されます。
CircleCIの設定
GitHubと連携することで、Github側の設定は不要になります。
デフォルトでは全てのコミットでビルドが走ってしまうため、プロジェクトの設定でプルリクのみ走るように変更します。
プロジェクトのリポジトリにcircle.ymlを配置します。
下記のサンプルはCircle CI v1.0の書き方です。
machine: timezone: Asia/Tokyo dependencies: cache_directories: - "vendor/bundle" override: - bundle -j4 --path=vendor/bundle test: override: - bundle exec danger
実装例
弊社で利用している実装例を一部紹介します。
プロジェクト共通のチェック項目
# 対象コード以外についてのメッセージは除く github.dismiss_out_of_range_messages # ===== Title ===== # PRのタイトルにYouTrackのIssue番号が含まれているか(文字列-数字の塊) match = github.pr_title.match /\w+-\d+/ if match # YouTrackへのリンクを貼る markdown "## YouTrack Ticket", "<a href='https://XXX.myjetbrains.com/youtrack/issue/#{match[0]}'>#{github.pr_title}</a>" elsif !github.branch_for_head.match(/release\/\d.+/) warn "PRのタイトルはYouTrackのIssue番号から始めてください。" end if github.pr_title.split(' ').size < 2 fail "PRのタイトルは、「Issue番号 Issueタイトル」形式にしてください。" end # ===== Description ===== # 本文が1行以上書かれているか(10行以下の軽微な変更は考慮) warn "作業内容について本文に1行以上の説明を記載してください。" if github.pr_body.length < 1 && git.lines_of_code > 10 # ===== Commit message ===== # コミットメッセージにYouTrackのIssue番号が含まれているか has_youtrack_issue_commit = git.commits.any? { |c| c.message =~ /\w+-\d+/ } warn "YouTrackのIssue番号から始まっていないコミットメッセージがあります。" unless has_youtrack_issue_commit # ===== Label ===== labels = github.pr_labels # ラベルが付いていなかったら「wip」ラベルを付ける add_label "wip", 'fbca04' if labels.empty?
Webのチェック項目
# ===== Code ===== warn "変更箇所が200行を超えています。可能であれば分割しましょう。" if git.lines_of_code > 200 if git.modified_files.include? "lib/XXX-module" warn 'sub moduleが変更されています。意図した更新か確認してください。' end if git.modified_files.include? "app/views/pc/*" warn 'PC ERBが変更されています。タブレットに影響がないか確認してください。' end
iOSのチェック項目
# SwiftLintのチェック swiftlint.lint_files inline_mode: true swiftlint.config_file = '.swiftlint.yml' protected_files = ["Podfile", "Cartfile", "Dangerfile", "Gemfile", ".gitignore", ".swiftlint.yml"] protected_files.each do |file| next if git.modified_files.grep(/#{file}/).empty? message("#{file}に変更が加えられています。") end if github.branch_for_head.start_with?("release") # Deliverfileの変更されているか warn "リリースノートを変更してください <a href='https://github.com/XXX/blob/develop/fastlane/Deliverfile'>Deliverfile</a>", sticky: true unless git.modified_files.include?("fastlane/Deliverfile") view_extensions = [".xib", ".storyboard", "View.swift"] has_view_changes = git.modified_files.any? { |file| view_extensions.any? { |ext| file.end_with? ext }} pr_has_screenshot = github.pr_body =~ /https?:\/\/\S*\.(png|jpg|jpeg|gif){1}/ warn("見た目に変更がある場合は、スクリーンショットを添付してください。") if has_view_changes and !pr_has_screenshot
Swiftlintを使う場合は、Gemfileにdanger-swiftlintを追加します
source "https://rubygems.org" git_source(:github) {|repo_name| "https://github.com/#{repo_name}" } gem "danger" gem "danger-swiftlint" // ← 追加
※ 一部、以下で紹介されているコードを参照してます
WEB+DB PRESS Vol.99:|gihyo.jp … 技術評論社
(おまけ)別のリポジトリにあるDangerfileを参照
各リポジトリでDangerfileを用意してチェック項目を記述していますが、組織独自のルールなど共通する処理は専用リポジトリで管理して参照するようにしています。
例えば、danger-lclというリポジトリを用意して共通のチェック項目を記述したDangerfileを管理します。 そして別のリポジトリのDangerfileで下記を追加することで、そのリポジトリのDangerfileの内容を読み込むことができます。
# danger-lclを読み込み danger.import_dangerfile(github: "XXX/danger-lcl")
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